麗雪神話~麗雪の夜の出会い~
「はっ」

と短い掛け声。

青みが増す強い瞳。

彼女の力強く素早い槍のひとなぎで、賊の男は見事に転び、間髪入れずに返した槍の柄が男のみぞおちに入る。

あっとういうまに賊が一人、気絶した。

偶然というにはあまりにも鮮やかな技だったが、ディセルはこの時点ではまだ偶然だと思っていた。

しかし彼女が金の髪と巫女の衣のすそをひらりとなびかせ、あちこちに散らばっていた賊を一人一人正確に、ばったばったと気絶させていくのを見て、確信せざるを得なかった。

彼女は槍を扱える。

いや―――槍の「達人」であると。

手加減できるのがその証拠だ。賊の誰一人として怪我を負っていない。

分が悪いと見た残り数人の賊たちが、慌てて逃げていくのも無理はない。

彼女は強い。圧倒的に。

ディセルは途中からセレイアの身に危険はないと判断し、惚れ惚れとその槍技に見とれていた。

その場にいた聖職者たち、一般の人々も、同じだったらしい。賊が逃げ散ると、わあっとあたりに歓声があがった。

「さすが姫巫女様!」

「なんとお強い!」

「ありがとうございます!」
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