麗雪神話～麗雪の夜の出会い～

「まずいわ、まだ見張りが気づいていないわね。急いで知らせなくちゃ！　賊なんかより、もっとずっと大変なの！」

言うなりセレイアは、脱兎のごとく駆け出した。

わけもわからずディセルも彼女の後を追う。

「セレイア！　どこへ！？」

「　“プミール”の獣舎よ！　詳しい説明はあと！」

“プミール”…？

初めて聞く単語にとまどいを隠せないながら、彼女について走ること数分、石造りの平屋の建物が目に入ってくる。

セレイアが迷わず飛び込んだことからすると、ここが“プミール”の獣舎なのだろうが…。

世話係の青年とセレイアが何か話している。その隙にあたりを見やったディセルは、感嘆の声をあげずにはいられなかった。

木の柵を隔てた向こう側に、見たことのないくらいかわいい生き物がわんさかつながれていたからだ。

一見するとこんもりとした毛玉や、上質なラグのようにも見える、ふわふわの白い毛を持った、犬によく似た動物。

だが犬よりもかなり大きい。

そして背中にはえている二対のものは…翼に違いない。

こいつ、まさか、空を飛ぶのか？

ディセルがまじまじと獣たちみつめていると、セレイアが鞍と手綱をつけた獣を一匹連れて走ってきた。ディセルをうながし外に出る。

「この子はプミラ！　私のプミールよ！　ディセル、とにかくあなたも乗って！」

間近で見るとプミラは相当な大きさだった。かろうじて首回りに両腕をまわしきれるか否か。大きな顔のつぶらな瞳が愛らしく、手入れの行き届いた純白の毛皮がふわふわと揺れてかわいい。