麗雪神話~麗雪の夜の出会い~
二人を乗せたプミラは力強く羽ばたき、宝石箱のような街ではなく、高台の見張り台に降り立った。

「姫巫女様!?」

突然の姫巫女の来訪に、見張りの兵が驚愕に息をのむ。

「城下に“霧”よ! 今すぐ三番風車をまわして! マスクをありったけ借りるわ!」

ディセルにはさっぱり意味がわからなかったが、見張りはセレイアの言葉ですべてを理解したらしく、慌ただしく動き始めた。

すぐに見張り台に取り付けられた巨大な鐘の音があたりに響き渡る。

どこか胸の内をざわつかせる音色だ。

「鐘の音は“霧”襲来の合図よ。これで“風車”がまわるわ」

「ふうしゃ」

「このマスクをして。霧を吸い込まないためよ。私たちは城下へ降りるわよ!」

ディセルは見よう見まねで、手渡された防護マスクを身に着けた。

セレイアがたくさんのマスクを鞍にくくりつけ、プミラにも専用マスクをし、手綱を一振りすると、再びプミラが翔ぶ。

今度は一直線に、紫の影の広がりつつある城下へと向かった。

びゅうと耳元で唸る冷たい風が肌を刺す。

だんだんと近づいてくる紫の影は、初めて見るディセルにも不吉なものに見えた。

紫の影は、セレイアの呼ぶ通り“霧”だった。

どんよりと空気を重くするような、いやなかんじの霧である。

二人はその中に突入した。
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