麗雪神話~麗雪の夜の出会い~
賊のことに加えて霧のことも、神殿に帰っていた大巫女に報告したあと、ばたばたとあわただしく残りの仕事を終え、陽落時(17時)に終業となった。

セレイアの一言は、すでに真っ暗になった、屋敷への帰り道でのことだ。

「どういうこと?」

ディセルが尋ねると、セレイアはふう、とためいきをついた。

しばし沈黙が落ち、さくさくと雪を踏む足音だけが響き渡る。

彼女の表情は、あたりが暗すぎてあまり読み取れない。

でもきっと、暗い顔をしているだろうことはわかる。

「…私ね、神様の予言を聞く、姫巫女として一番大切な力が…ないのよ」

「…!」

それは彼女にとってどれだけ勇気のいる告白だったろう。

それを思うだけで、ディセルは胸が痛くなった。
< 37 / 149 >

この作品をシェア

pagetop