WHY
午後の帰り道は、少し家にはまっすぐ帰らず、寄り道をして横浜の繁華街に出くわした。このところからあまり、人が多いところは極力避けていた。うっとうしい、わずらしい事が先に来て、なかなか皆とも帰り道一緒に過ごす事が少なくなってきた。今の現状は耐える事しかできないと思っていたので、新しい事も見出せずに居たのは確かだ。夕暮れの待ちは優しく包み込む雰囲気ではないが、それでも明るい町並みはなにかホッとさせるものでもあった。

 その時に人にカフェバーが目にとまった。名前は「ダボス」。夜でも気軽に、入れそうな喫茶店で、どうやらお酒はだしていななさそうだ。夕方間近だったが、まだ時間的に大丈夫だと思い、意を決して入った。


 中の雰囲気は大人の雰囲気で、ランプをベースにしてとても落ち着いた雰囲気だ。店内には、ジャズとその頃はやりつつある、R&Bが店内に流れて、毎日の生活から少し開放される空間となっていた。
カウンターの中には、優しい笑みを浮かべ、カウンター席に誘導してくれる一人の紳士がいた。多分この方が、主人ではないかと思うが、ひげが口を多い、長いあご下の髭は少し白くなり、風貌はかなり、海賊みたいだったが、話をしてみるととても、低い声で内まで響いてくる感じだ。
 
 席に着くと、私はアイスカフェオレを注文した。ステンレスの入れ物中にはガムシロップが入っており、開封式で見たこのない物だった。今とは違い、インスタントカフェ屋がなかった時代なので、当たり前なのだが、こうやって引き込まれた一人で入る店は初めてだった。店内を見ると、昼下がり、サボっているサラリーマン風の人や、一人で読書にふけるおば様、必死に勉強をしている学生など様々だが、それでも皆一人での利用に少しホッとした。

 落ち着く雰囲気の中に、一人事を考える。

 

考えれば考えるほど、何か悔しい。
 
 何をしたというのか、何が自分にはいけないのか、足りないのか。




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