WHY
ただし、真実を伝えなければならない。そろそろ、こっちに遺体解剖して戻ってくる頃だ。
 そうなってからでは遅いと思った。




 「実は、ご両親に話しをしておかなければならない事があります。これは決して
  喜ばしい事ではないんですが、それでも清美さんの真実を知ってもらいたい現実が
  ありますので。」




 「えっ!それは何でしょうか。何か私たちに隠し事でもあったのでしょうか。」
  お母さんがかなりの動揺を示した。




 「隠し事ではないんです。隠さなければならなかったといった方が正しいと思います。
  今から、私が責任を持って話しをさせていただきます。」




 頂いたお茶に一口をつけて、一気にあの子から聞いた事、昨日の事、どうするかの経緯
 を話した。時折、見えるお母さんの悲痛な泣き声。お父さんの、凛々として私の話に
 耳を傾けていらっしゃる目。とても印象的だった。




 「これで、全部です。遺体解剖して全て分かる話ですが、それからでは、あまりにも
  酷すぎる話と思いましたので、私の方から話をさせていただきました。」


 「うん、君の勇気ある行動に感謝します。そうなってからでは、私どもも今の心境から
  考えると、切り口に荒塩を塗られるものだ。ありがとう。」



 「いいえ、私たちは一緒に居ただけで、なんも役には立てませんでした。
  結果、こういう結果になりましたので…。」




 「いや、そんな事はないよ。それだけかもしれんが、それが何より清海には
  励みになってくれたろう。」


  横目で、泣きじゃくる、奥様の事を気遣いながら、話しをしてくれた。



 
< 99 / 203 >

この作品をシェア

pagetop