まっしろな遺書
「生きるって大変だよね」

 男の耳に懐かしい少女の声が耳に入ってくる。
 その声は、男の幼なじみ本田 自由(ほんだ みゆ)のものだった。

「自由、迎えにきてくれたのか?」

 男は、尋ねる。

「私、もっと生きたかった」

「そっか……
 自由、お前には夢があったもんな。
 だが、俺にはなーんもないんだ。
 なんもなかったんだ。
 なんも出来ないんだ」

「昔からそうだよね?嫌なことあるとすぐに死にたがる。
 そのくせ根性ないから死ねない。
 ねぇ、どうして十三はそんなに死にたがるの?」

「それは……」

 男は何も言い返せなかった。
 ただ、ただ……ただ、言い返せなかった。
 命を落とした自由に言い訳ができるほど男はただ涙をながすことしか出来ない。
 男の名前は、詩空 十三。
 28歳。
 仕事とお金を失い全てに絶望して自殺しようとした男だ。
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