本気の恋をしようじゃないか《加筆修正版》
え?!何する気なの?
私のいる席からは美和が何をしゃべっているのかわからない。
だけど美和以外の人たちの驚いた表情だけはしっかりとわかった。

一体美和は何を言っているの?
美和たちの所に行きたいのに自分に自信のない私は椅子に接着剤が塗られているかのように立ち上がることが出来なかった。
あれだけたくさん飲んだのに酔いはすっかり覚めた。
その代わりに緊張で息苦しささえ感じる。
とにかく美和が戻ってきたら帰ろうと自分の座っている椅子の横に置いてあるバッグの中から財布を取り出していつでも席を立つ準備をしてたのだが財布をもってない手を誰かが掴んだ。
ゆっくりと目線だけを上に上げるとそこには恵が少し呆れ顔で私を見ていた。
「け、惠!」
その後ろには恵以上に呆れた顔の美和が腰に手を当てバッグとコートをもって帰るよと先に出入り口へと歩いて行った。
残された私はというとバツの悪さは半端なく何を言えばいいのかうろたえていた。
もちろん手は掴まれたまま。
しかもなんだかどこからか視線を感じる。
ちらりと上目遣いで前を見ると恵と一緒にいたあの女性二人が顔を揃えて見ていた。
「恵、戻ったら?私美和と帰るし」
椅子に置いたコートとバッグをとって椅子を引くと恵が掴んだ腕を引っ張って私を椅子から立ち上がらせた。
「ちょっと来て」
「え?」
恵に引っ張られ向かった先はまさかの恵たちの座っていた座敷だった。
「ちょ、ちょっと」
恵君は戸惑う私の肩をぐいっと寄せた。
「この人がさっき話した僕の恋人なんです。すみませんが体調が優れないようなのでつれて帰ります。杏奈行くよ」
座敷にいた3人はただただ頷くだけだった・・・
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