本気の恋をしようじゃないか《加筆修正版》
「あああああ!それ!それだよ!それのせいで俺は」
いつの間にか電話を終えた恵が物凄い形相で走ってきた。
「お~~!イケメン小牧元気そうだな!」
悪気なんか全くありませんって顔の先生に対し恵は完全に臨戦態勢だ。
「つっちー!それ!そのわしゃわしゃのせいで俺は10年も杏奈に片想いしてたんだからな!もうわしゃわしゃ禁止!」
恵は私と先生の間を割る様に入ってきて先生を睨みつけた。
先生はそんな恵をみてげらげら笑い出すと、
「香坂よかったな」
私の恵への思いを知っているからこそのこの言葉に胸が熱くなる。
「ハイ!」
すると先生の奥さんらしき人が授乳室から出てきた。
ショートカットが似合う綺麗な人だった。
「先生~奥さんめちゃめちゃ綺麗じゃないですか!」
先生はうるせ~っと言いながらも幸せそうだった。
「じゃあ・・俺行くわ」
そう言って辻先生は奥さんの方へと歩いていたが、急に足を止めたかと思ったら振り返った。

「おい!小牧」
「なんすか?」
面倒臭そうに返事をする恵に先生はニヤニヤしながら親指を立てた。
「結婚っていいぞ~~」
そして先生は奥さんの元へ歩いて行った。
私たちは幸せそうな先生の姿を黙って見ていた。
しばらく私たちの間に沈黙が続いたがその沈黙を破ったのは恵だった。
「なんだよ!つっちー俺が杏奈と結婚したいのわかっててあんな事言いやがって」
「え?」
彼の言葉に顔から火が出るかと思った。
恵は相変わらず時々凄い事を平気で言う。
その度に私はドキドキしてどう返事をしたらいいのか悩む
だから私は彼の手をギュッと握った。

私も同じ気持ちだよって・・・・伝わるように・・・
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