本気の恋をしようじゃないか《加筆修正版》
恵は私を抱き寄せた。
「でもやっと2人でこの場所に来ることが出来た」
「うん」
「初めてここで杏奈とキスしたね・・・」
「初めてなのに恵って物凄く大人なキスするからもうどうしようかと思った」
恵は口を尖らせる私の口に人差し指を当てニヤリと笑った。
「でも・・・すっげとろとろの顔してたよな」
「ちょ、ちょっとー恥ずかしい事言わなーー」
私の言葉を最後まで聞かず恵は私にキスをした。
リップ音をわざと出す恵に私は微笑みながら同じ様にリップ音で返す
恵が私の口内に舌を滑り込ませたなら私も恵の舌に絡みつく。
恵が私の下唇を甘噛みするなら私は恵の下唇を舐める。
「なんか場所が違うだけで燃え上がっちゃって収拾つかなくなりそうだよ」
「ちょ・・ちょっと私はそんなつもりで言ったんじゃないし・・・」
我に返って、めちゃくちゃ恥ずかしくなり両手で顔を抑えた。
「でもさ?まさかこうやってまた、杏奈とここに来れるなんて10年前の俺は想像できなかったな?」
私は黙って頷いた。
「ねぇ・・・杏奈は今幸せ?」
「幸せに決まってるじゃない。恵は?幸せ?」
「幸せだよ・・・だけど・・・俺って欲張りだからさ・・・もっと幸せになりたいんだよね」
恵が先に立ちあがり私の腕を掴むと力を入れて立ちあがらせた。
「恵?どうしたの?」
これ以上の幸せって?
恵は大きく深呼吸をするとポケットから何かを取り出した。
「もっとゆっくり恋人気分を味わいたいって思ってたけどさ、俺って杏奈にだけは貪欲で片時も離れたくないんだよね」
「それは私も同じだよ」
すると恵は首を横に振る。
「いや、そんな軽いもんじゃない。合鍵渡して週末だけ杏奈の手料理食ってたら毎日食べたくなったし、
 杏奈とメールや電話を切った後も話し足りなくてもっともっと話したいって思ったし、杏奈が泊まって帰った後の一人寝は無性に恋しくなるし、もっともっと一緒にいたい・・・そう思ったら恋人気分なんてどうでもよくなった。」
「恵……」
恵は私の手を取った。
「結婚してほしい」
恵は私の左の薬指に指輪をそっとはめた。
「恵!」
「嫌なんて言わせないよ」
私はこのうれしさをどうやって恵に伝えればいいのかわからなくって口をパクパクさせる。
「杏奈、口が鯉みたいだよ」
恵がくすくす笑う。
私は大粒の涙を流しながら恵のTシャツを掴むとそのまま自分からキスをした。
言葉で表せないのなら態度で示せと・・・
「これってOKって意味でいいんだよな?」
私は大きくうなづいた。
「しかし、返事がキスって……俺の奥さんって意外に大胆なのな」
「大胆な女はダメ?」
恵は私を抱き締めると耳元で囁いた。
「大歓迎だよ。でも続きは俺のマンションでね」
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