本気の恋をしようじゃないか《加筆修正版》
男の人と飲むときのルールとして、フルネームは教えるなと美和に言われている。
下の名前。もしくは偽名もOKなのだ。

普段、偽名を使う事のない私。だけど今回だけは偽名必須!
私は「カンナ」と名乗った。
杏奈じゃなくてカンナ。一瞬美和が吹きそうになったのは、きっとこの偽名がひねりも何もないと思ったからだ。
だがしかし当の小牧君は私に関心がなさそうなそぶりだった。
時間がどれだけ経とうが私の置かれる位置は変わらないのだと痛感した。

でもこんな感じなら一人で焦って偽名にする必要はなかったのでは?
とさえ思えてきた。

帰りたい・・・

普段は美和がいるから男の人に話しかけられなくても帰りたいと思った事はなかった。
だけど今日だけはどうしても平常心ではいられなかった。
「美和…ちょっとお手洗い行ってくるよ」
私は美和にだけ聞こえる様に小さな声で告げ、席を離れた。
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