本気の恋をしようじゃないか《加筆修正版》
恥ずかしくってその視線を逸らそうとすると、小牧君はそのきりりとした目で私を見つめながら、ちゃんと俺を見ろと言うが、そんな余裕どこにもない。
「む、むり……恥ずかしすぎる」
手で顔を隠すと、その手は小牧君によって剥がされ、そのまま押さえつけられた。
「ちゃんと見ろ……ちゃんと俺を」
小牧君の真剣な眼差しに逃げや冗談は通用しないと思った。
私を見る目も抑えている力強い腕も、私呼ぶ声も初めて肌を重ねた時とは全く違う。
「小牧君」
名前を呼ぶと愛おしそうに私を見つめた。
「ずっと思っていた。もう一度杏奈とやり直して、杏奈を抱きたい。離れたくなくなるぐらい抱きたかった。愛してる」
再び唇が重なり合う。
そして私のセーターの中に手を滑り込ませた。
小牧君の冷たい指が私の身体の輪郭を撫でる様に滑らせた。
キスで身体中が敏感になっている私は触れられただけで反応してしまった。
「ここ……誰かに触られた?」
少しかすれた囁き声が妙に色っぽくて、声だけでドキドキしながら私は首を横に振った。
「じゃあ……ここは?」
小牧君が私の身体に触れながら、小牧君以外の人に触られたのかを確認する。

後にも先にも触れられたのは小牧君ただ一人だってわかっているのに小牧君はわざと私に問いかけてくる。
それはまるでこの身体は俺だけのものだと言っている様にも聞こえた。

あんなに緊張していたのに、小牧君に囁かれる短い言葉の一つ一つが愛おしく、私の中の感情が解放される様だった。

「全部・・・小牧君だけだよ・・・」
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