君と春を

百合と春瀬




「出張……ですか。」

「そう。ミラノに3日ね。」

それは突然だった。専務の出張。
日本にまだ来ていないイタリアの新進ジュエリーブランドとの大掛かりな事業展開が持ち上がっているためだ。

「営業一課と企画開発のヤツらも同行するから宜しくね。」

「わかりました。留守は預かります。」

「ふふ、いや。そうじゃないよ。」

…そうじゃない?

専務の顔を見上げると、楽しそうな視線を私に向けている。

「もちろん同行。イタリア語話せない俺を放置する気?」



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