ヒカリ
それから、しばらく黙って泉水のギターを聞いていた。

隠れて聞いていたときよりも、ずっといい。

泉水の左手の指の形が変わると、音も変わる。
それが不思議に思えて、ころころと器用に変わる長い指が、芸術的に美しく思えて、いつまで見ていても飽きない。

「恵玲奈はなんでモンゴリアン知ってるの?」

曲が終わったところで、泉水が聞いてきた。

「高校生の時に、たまたまCDショップのインディーズのコーナーで見たの。ジャケットが目について、なんだか気になって。」

「あぁ、男の子と女の子が寝転んで星見てるやつ?」

「そう。」

すごくロマンチックな写真なのだ。
満天の星空の下、手を繋いで寝転ぶ恋人。

「あの写真でバンド名が『モンゴリアンチョッパーズ』だもん。気になるでしょ。」

「気になる気になる。」

泉水は笑った。
笑うと目がくしゃっとなる。

「泉水は?」

「俺?俺はバンドのドラムやってるやつに教えてもらった。すげー熱いやつらがいるって言って。最初はモンゴリアンのコピーばっかりしてた。」

「高校生だったでしょ?その頃からバンドしてるの?」

「そうだよ。」

いいな。
いいな。
なんだか青春って感じだ。

イヤホンで一人で聞いてた私。
友だちと聞いてた泉水。

いいな。
泉水は。
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