ヒカリ
泉水はまた一本一本、弦を鳴らし始めた。
アルペジオっていう弾き方だと教えてくれた。

「どうしていつも夜の公園で弾いてるの?」

寒いから、指が痛そうに見える。

「昼間は大学とバイトだし。夜に部屋で弾くと、隣から苦情きちゃうでしょ。」

「バイトしてるの?大学生なのに?」

「バイトくらいするだろ、普通。俺、学費以外は自分で払ってるし。バンドも金かかるんだよ。スタジオ代とか、ライヴもチケットノルマあるし。」

「生活費、自分で払ってるの?」

自分でも驚くくらいに大きい声が出た。
信じられない。
そんなの、親が出すものじゃないの。

「そんなに驚く?だって、大学も音楽も、俺がやりたくてやってるんだから、生活費くらい自分で稼ぐのは当たり前だよ。」

「へぇ…。」


へぇ、以外に言葉が見つからない。
大学なんて、親がお金を出して行かされるところだと思ってた。

「…なんのバイトしてるの?」

「多いのは引っ越し会社かな。時給がいいから。夏はプールの監視員とかしたな。あとはガードマンとか。ライヴ近くなると忙しいから、あんまり長期バイト出来なくて、短期バイトが多い。」

「へぇ。」

引っ越し会社に監視員、それにガードマン。

バイトさえしたことない私には、時給がいいの基準もよくわからない。




< 20 / 147 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop