ヒカリ
泉水のアドバイスはこうだった。

「和菓子がきれいだし、制服がかわいいからです、なんていう理由はだめ。絶対、落とされる。そうだな…、日本文化としての和菓子に興味があるとかどうだろ?」

「日本文化としての和菓子…?なにそれ?」

「いや、だめだな。つっこまれたら恵玲奈、うまく返せないな。じゃあ、和菓子を通じて、お客様の笑顔が見たい…。これも嘘っぽいなぁ。」

泉水はあぐらをかいで、その中にチャーリーを中にすっぽり入れている。
チャーリーは居心地がよさそうだ。


「やっぱここはシンプルに、和菓子に興味があるから。和菓子に詳しくなりたいから。いや、逆にざっくばらんに、家から近いから。金が欲しいから…。いや、やっぱりこれはちょっとなぁ。」

ぶつぶつと言いながら、チャーリーの頭を撫でる。
撫で方がさっき私にしたのとおんなじだ。

「以前から和菓子に興味があり、働きながらいろいろなことを覚えたいからです。よし、これでいこう。」

泉水はうんうん、と頷きながら、私に繰り返せ、と言う。

「以前から和菓子に興味があり、働きながらいろいろなことを覚えたいからです。…私、別に和菓子に興味なかったんだけど、大丈夫かな。」

「大丈夫、大丈夫。そんなの。一字一句、忘れるなよ。履歴書にもそう書けよ。」


泉水の言葉に、私ははい、と元気よく答えた。
やっぱり泉水は頼りになる。

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