さちこのどんぐり

「なんか…がっかりだな…」

ファミレスでのバイトが終わってから、
郊外に借りているアパートへ帰る電車のなか。

背が低いため、吊り革にやっと掴まる奈津美は、
真っ暗な窓の外と、そこに映る自分を見ながら、
ぼんやりと小野寺のことを考えていた。


背は普通に高かった。多分175cmくらいかな。
体型も一見細く見えて筋肉質といった感じ。

それに顔は…

顔も悪くない。どちらかといえば綺麗な顔だ。

でも話し方の「自信が無さげ」なところや、
少しおどおどした感じが嫌だった。


せっかく「良い出会い」を期待してたのに…


奈津美には東京での生活も、高校時代までと変わりなく、
ひどく「地味」なものに感じていた。



今夜も暗く、寒いワンルームの部屋に帰るのが寂しかった。
< 11 / 163 >

この作品をシェア

pagetop