いつだって、ヒーロー。


「ねえ!これちょうだい?」


俺のお弁当の卵焼きを指差す。


目をキラキラ輝かせる田渕は、まるで餌を待つ犬のよう。


「はあ?むーり。これは俺のおかんが俺のために作ったやつだから」


「ええっ!いーじゃん!」


「あっ!おまっ…勝手に食うんじゃねえよバーカ」


我慢できなくなった犬は、俺の許可なく卵焼きをパクリ。


おいし〜っ!と、ふにゃっと笑いながら食べる。


お仕置きにと、チョップをかます。


「いった〜い!あは、あはははっ!」


痛いくせに何か面白くなったのか、笑い出す。


それにつられて、俺も笑う。



なーんだ、俺笑ってんじゃん。
楽しんでんじゃん。


いつかコイツのことを好きになれそうじゃん。



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