強引社長の甘い罠
 私はデスクのパンフレットと画面に表示されているWebサイトの画像を示した。

「例えばここです。設備の紹介や説明の部分はいいと思うのですが、施術中の写真が極端に少ないと思いませんか?」

「そうね……」

「他のエステティックサロンのページもいくつか見たんですけど、やっぱり施術中の写真がたくさんあった方がいいような気がします。もっとも、私たちの仕事がこんなことに口を挟むことじゃないことは、分かっているんですけど……」

 最後の方は尻すぼみになった。課長が親しくしているサロンにケチをつけるようなことを言ってしまったかもしれない。心配になって椅子に座ったまま、チラリと課長を見上げると、彼女は意外にも嬉しそうだった。

「そんなことないわよ。言ってくれてよかったわ。先方には早速そこから提案してみるから、サイトデザインについては他のところから取り掛かってくれる?」

「分かりました」

「助かったわ、七海さん」

「いえ。お役に立てたのならよかったです」

 にっこり微笑むと、鈴木課長は安心した様子で自分のデスクへ戻っていった。
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