強引社長の甘い罠
 帰りの高速道路は少し渋滞したけれど、そんなことは全然気にならなかった。祥吾と再び身も心も結ばれた今、幸せを噛み締めるのに忙しかった。

 車窓の景色が見慣れたものに変わる。もうまもなく祥吾のマンションだ。彼が私をアパートに送らずここへ帰るということは、今日私が眠るベッドは彼のベッドだということだ。うん、素敵。
 今日もあちこち寄り道をしたし、渋滞にもはまったからすっかり夜になっている。私たちは祥吾のマンションの近くにあるイタリアンの店で食事を済ませてから帰宅した。



 旅行から帰ると途端に疲労が襲ってくるのはどうして? それまでは元気だったのに、彼のマンションにつき、荷物を出し、お風呂に入り、寝る準備ができたところで急激な睡魔に見舞われた。

 リビングの、無駄に大きなコの字型のソファの端に座ると、私の頭は支えが必要になった。まだ起きていたいのに、ふと気づけば頭がカクンと下がってしまう。

 祥吾は帰宅してすぐ、何やら電話が入り仕事モードになってしまった。スマホの画面を確認した祥吾が英語で応答していたから、きっと祥吾のアメリカにある会社からの電話だろう。

 私は祥吾のアメリカでの仕事をほとんど知らない。祥吾が父親から継いだ海運会社の他に、投資会社を設立したということを知っているだけだ。今度、祥吾に詳しく聞いてみよう。彼なら私にも分かりやすく簡潔に教えてくれるはず。

 だんだん抗えなくなってきて目を閉じたとき、私の体がフワリと浮いた。うっすら目を開けると、優しい瞳と視線がぶつかる。祥吾が愛しいものを見る目つきそのもので私を見下ろしていた。
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