剣華
---こいつは武士ではないな---

 立ち位置も、髭面の少し後方だ。
 おそらく後方支援が主な役割だろう。

 ということは、匕首よりも右手を警戒しなければならない。
 まず間違いなく、飛び道具と思っていいだろう。
 まさか短筒ではないとは思うが。

 俺は居合腰に腰を落として身構えた。
 刀を構えた前の三人の誰かが仕掛けるだろう。

 髭面ではないと見た。
 こいつは確実に俺を殺したいはずだ。
 誰かに先に仕掛けさせて、隙を狙うだろう。

 じり、とつま先で、相手が間合いを詰めてくる。
 耳が痛いほどの静寂。
 俺はこの一瞬が好きだ。

 刹那、右手にいた女のような若者の剣先が、ぴくっと浮いた。
 ほとんど同時に、俺も仕掛けた。
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