オオカミくんと秘密のキス
東野の家の方に向かうのが一番いいのかな…

くそ、さっき東野の家の場所聞いておくんだった…



俺は風に向かってひとまず駅の方に向かいながら、スマホを出して圭吾に電話をかけた。







「もしもし?誕生日おめでと~さっきLINE送ったのにスルーすんなよ」

「すぐ小川に電話してくれ」


誕生日モードの圭吾だったが、切羽詰った俺の声を聞きすぐに声が切り替わる。





「…小川?どうかしたのか?」

「沙世と連絡がつかねえんだ。数時間まで小川達と東野の家にいたまではわかってるから、沙世の居場所と東野の家の場所を聞いてくれ」

「わかった!すぐ折り返しかけるよ」

「悪いな、頼むよ」


俺は電話切り、とりあえず沙世の家に向かって走り始めた。





ポ、ツ…

ポツポツポツ…


ザーーーーー……





雨が降り始め、雨の粒はすぐに大粒に変わり一瞬で辺りは大雨になった。

俺は手に持っている傘をさして、止まらずに沙世の家に向かって走った。


いつもは沙世を家まで送るとき近いから物足りないくらいなのに、今日は沙世の家までの距離がすごく遠く感じる。

横断歩道の赤信号引っかかると、いつもの何倍もイライラする…







沙世…

どこにいる…?


連絡がつかないなんてこと今までなかった…沙世の性格からして、こんなことが起きるなんて有り得ないんだ。

きっと何かあったに違いない…






♪♪♪♪♪…


信号待ちをしていると、俺のスマホが鳴った。俺はすぐに電話に出る。








「もしもし!?」

「小川に聞いたよ!」


電話は圭吾からだった。さすが俺の友達、仕事が早い。





「なんだって?」

「3時半くらいに東野の家を出たらしい。ちなみに東野の家はT原の方だって」



T原…?

そこからならうちの最寄駅から電車で3個くらいだろ?

なのに3時半に出たなんて…ちょっと早すぎねえか?






「沙世はどっか行くとか言ってなかったのか?」

「さぁ…凌哉の家に行く前に寄る所があるから、早めに出るって言ってたみたいだけど…」

「そうか…悪いな圭吾。また連絡する」



寄る所って…どこだよ…

何してるんだよ、沙世…


こんなことなら、やっぱりさっき無理にでも東野の家に迎に行くべきだったんだ…





信号が青に変わり、俺は猛ダッシュで走り始めた。

雨と風はどんどん強くなり、視界が悪く前に進むだけでも困難になっていく…




まるで嵐だな…

こんな天気が崩れるなんて…天気予報で言ってたか?

こんなになるって知ってたら、沙世を一人で家に来させたりしなかった…



さっきから後悔ばかり…

こんなことしたって意味ないのに…











ピンポーン…


沙世の家のアパートに着き、俺は部屋のインターフォンを鳴らす。

しばらく待っても部屋の中から誰も出てこない。物音すらしないから、誰もいないと思う…




ピンポーン…

ピンポーン…ピンポーン…




何度ベルを押しても同じこと。家には誰もいない…
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