オオカミくんと秘密のキス

2日目

がやがや



「あんみつ4つ追加~」

「了解!」


翌日の文化祭二日目。予想していた通り、私のクラスのあんみつ屋は朝から大盛況だった。

私は今日も係の仕事が午前中からで、今回は調理室であんみつや他の料理を作る役割をしていた。汗を吹き出しながら手を動かして、次々と和スイーツを仕上げていく…



樹里は何時頃来るのかな…

もしかしたらLINEが来てるかもしれないけど、忙しくてスマホ見れないんだよ~





「萩原さん!生クリームが足りないんだけど」

「えっ!」


嘘!あんなに買い置きがあったのに~






「私近くのスーパーで買ってくるよ!」


思わぬハプニングもあり私はバタバタと走り回っていた。


一般公開の今日は自分が思っていたよりも人が押し寄せて来て、飲食店を開いている私達クラスは文化祭というよりもまるでバイトしてるみたいだ…

こんなに忙しいから、樹里達が来ているのかすらわからないし。





「萩原さーーーんっ!ついでにきな粉も切れそうだから買ってきて~」

「はいはーい!」


下駄箱に向かって走っていた私をクラスの女子に引き止められ、急ブレーキをかける私は体から汗が吹き出した。


浴衣ってこんなに暑かったっけ…?

本来なら涼しく感じるように出来てるんじゃないの…?




私はひたいに流れる汗を拭き下駄箱で靴を履き替えると、急いで学校から一番近いスーパーへ向かった。








す、涼しい…


クーラーが効いているスーパーに入ると、まるで地獄から天国に来たような気分だ。



秋なのにまだまだ暑いなぁ…

真冬で寒過ぎるのも苦手だけど、早く過ごしやすい陽気になって欲しいよ。






「沙世?」

「?」


スーパーのかごを持ち生クリームを選んでいると…後ろから誰かに声をかけられた。振り返ると…






「樹里っ!」

「沙世~!!」


後ろには制服を着た樹里がいて、私の顔を見るなりぎゅううぅと抱きついて来た。






「超偶然♪これから学校に向かおうと思ってたんだよ~!どうしてこんなところにいるの?」


樹里は黒髪のお団子ヘアーで色白で小顔。目がクリクリと大きく、メイクも控えめでとてもナチュラル。

昔から可愛かったけど、今は少し大人っぽくなっていると思った。





「材料が足りなくなったから買出しに来たんだ~樹里こそどうしたの?」


まさかスーパーで樹里に会うなんて思ってもいなかったから…びっくりしちゃった。





「トイレ借りたんだよ~ついでに喉乾いたからジュースでも買おうかなって」

「あ、そっか」


樹里はペットボトルの紅茶を持っていた。






「おいおい。俺のこと無視すんなよー」

「え?」


すると私と樹里の間に急に割り込んで来たのは、絢人。






「絢人だー!」


突然の登場に驚きながら、私は思わず絢人を指でさしてしまった。





「指さすなよっ!」

「あっははは」


私と絢人のやり取りを見て樹里は大声で笑う。





「萩原久しぶりだな。つーか変わってない?相変わらずヤンキー顔だし」
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