オオカミくんと秘密のキス
自信なかった割には、今はすごく余裕に見えるのは気のせいか?

なんだか機嫌も良くなってるし。





「そういえばニキビどうした?」


思い出したように言うと、尾神くんは私のあご辺りを探るように見る。




「薬塗ったけどまだ痛いよ」

「本当だ出来てる…」


私のあごにできたニキビを、指でそっと触ってくる尾神くん。




「痛いよ」

「俺のキスを防いだからバチがあたったんだ。俺からのキスを拒否ると痛い目に合うってことだな」


こ、こいつは…

やっぱりこのオオカミには勝てる気がしないわ…




ぎゅ


突然尾神くんが私の両手を握る。





「キスしていい?」

「……嫌だよ!」

「何で?」


恥ずかしくてうつむく私の耳元で話す尾神くん。そんなことされると余計恥ずかしい…





「何でって…こっちが聞きたいよ!なんで付き合ってるわけじゃないのにキスしてくるの?」


ずっと聞きたかったんですが!




「好きだからに決まってんじゃん」

「え」


何言ってるの…?

またお決まりのおふざけ?




「な、なんでよ?私とあんたなんて別に接点ないじゃん!」


遠足で同じ班になったくらいしかないし、そこまでちゃんと話したことだってないし…

いきなりの告白に戸惑いオロオロと話す私は、自分で何を言ってるのか自覚がない。






「接点がないと好きになったらいけねえの?」

「…そうじゃない、けど…」

「ならいいじゃん」

「よくない!だってキ、キスって付き合ってる2人がするもんじゃん!!」


こっちは彼氏でもないあんたにファーストキス奪われたんだからね!




「じゃ付き合ってよ」

「え…」


うつむいていた顔を思わずあげてしまう。

尾神くんの顔は真剣だった。ふざけてもからかってもいない…





「…急にそんなこと言われても……」


どうしたらいいかわかんないよ…

でもちょっと嬉しい…胸がドキドキする…

告白されたのなんて生まれて初めて…





「高校に入学した時から、ずっと沙世のこと気になってた」

「………嘘。どうして私なんか」

「同じ匂いがしたつーか…」


同じ匂い…?



「お前とは気が合うかなって勝手に思った。うまくいえねえけど直感てやつかな」

「ふ、ふーん…」


そんなふうに感じてくれてたんだ。私は尾神くんのこと違う世界で生きる人みたいに見てたのに…





「好きって自覚したのは遠足の辺りだったかな。お前と同じ班になれて嬉しかったし、話してて楽しかった。昼寝中にお前が俺にダイブして来た時は正直びっくりしたけど」

「そ、そう!あの時なんでキスしたの?」


あれが全ての始まりだった。あの日からこいつにからかわれっぱなし…





「目を開けたらお前がいて…気がついたら体が動いててキスしてた。今思えばキッカケが欲しかったのかも」

「随分なきっかけ作りだね…」



でも、あれは寝ぼけてたわけじゃなかったんだ…

私に好意を持ってくれた上でやったことだったなら、ファーストキスを奪われたけどこんなふうに言われると悪い気はしない。






「お前は?俺の事どう思ってる?」
< 27 / 210 >

この作品をシェア

pagetop