オオカミくんと秘密のキス
「え…」


どうって…そんなの……




「わかんない…」

「…そっか」


がっかりとした顔をする尾神くんに、胸がキュッと締め付けられる。




「で、でもっ…今すぐじゃなくて、も…いいんじゃない?時間をかければ気持ちも変わるかも…」


何言ってんだ私は…口が勝手に動く!

これは本音なの…?

ってことは尾神くんのこと気になってることになる…





「そうだな…」


私の頭をぽんと撫でる尾神くんを見上げると、優しい顔をして笑っていた。


心が暖かい…

こんな気持ちになったことは今までなかった……






「俺頑張るから」


握り締めている私の手を尾神くんがぎゅっと力を込めた。私は「うん…」と小さく頷く。




「そのうち俺の事しか興味なくなるくらいにしてやる。そんでお前から俺にキスしてもらうことが目標かな」

「バ、バカ…絶対しないから!」


この自信はどこからくるんだろ…

呆れる部分もあるけどこういうところもかっこいい。やっぱり尾神くんの魔法にでもかかっているんだろうか…





「ってことは、俺からするのはいいんだな?」

「へ?」

「するよ?…キス」


そんなふうに言われたらもう拒めない…私は顔を赤くしながら目を閉じるのが精一杯だった。

すぐに唇に柔らかい尾神くんの唇が当たる…

今までの一方的なキスじゃない。

優しくて暖かいキス…

そう思うのは、私が尾神くんを受け入れてるってことなのかな…


ゆっくりと唇が離れると、尾神くんは私をそっと抱きしめる。超が付く程恥ずかしい私は、尾神くんの胸に顔を隠すように埋めた。


恥ずかし過ぎて死にそ…

それに暑いよ~私絶対に顔真っ赤だ!





「かわいい沙世」


ぐっ…………



今度は私の耳にキスしてくる尾神くん。きっと耳も更に赤くなっただろう…




「沙世」


耳にキスしたあとそのまま耳元で囁く尾神くん。




「な、なに?」


抱き合っているこの状態も恥ずかしいけど、今は尾神くんの顔見れないよ…





「LINEやってるなら…ID教えて」


あ、そっか…

連絡先交換するんだったね…





「…うん」


埋めている顔を上げると、尾神くんがまた顔を近づけてチュッと軽いキスをしてきた。

また恥ずかしくなって唇を両手で覆うと、尾神くんはクスッと笑う。







「やった…」


そしてそう笑うと、嬉しそうにポケットからスマホを出した。


ホコリだらけでガラクタばかり置かれた汚い教室で、私達は連絡先を交換した。
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