オオカミくんと秘密のキス
「あんた尾神くんと顔見知りなの!!?」


洋平の肩を掴み顔を近づけると、洋平は顔をこわばらせて私を見た。





「う、うん。この前隆也んち行った時に、凌哉兄ちゃんがいて一緒に遊んでくれたんだよ。お菓子とか買ってくれたりして…」


尾神くんちに行った?

遊んでもらってお菓子まで買ってくれたの!?

そんな話聞いてないよ…


隆也くんの後ろに立ち首筋をポリポリとかく尾神くんを真っ直ぐ見つめ、私はゆっくりと口を開いた。





「その節は…弟がお世話になりました…」


洋平の頭の後ろを手で押し、同時にお辞儀をする。



落ち着け…落ち着くのよ!

こんな偶然普通ならありえないけど、こんな事が 現実で起こってるんだからちゃんと受け止めなくちゃ!


でも、尾神くんにどう接していいかわかんないよ~

ずっと連絡を待ってた人と急に会えるなんて思ってないし…それに一昨日の放課後に…




『かわいい沙世』



尾神くんにキスされたことや抱きしめられたこと、告白されたことを思い出して恥ずかしくなる。


こ、ここは妙に意識しちゃダメだよね!

弟達もいるし自然にしなきゃ…




「こちらこそ。いつも弟がお世話になっています」


今度は尾神兄弟が、私と洋平に頭を下げてくる。


う…尾神くんの爽やか王子スマイル…これはからかいモードに入ってるな。






「せっかく会ったんだから一緒に映画観ようぜ!」


洋平が隆哉くんの肩を抱く。




勝手に決めるな弟!





「洋平と一緒に観てもいい?」


隆也くんが顔色を窺うように聴くと、腕を組んでいる尾神くんが口を開いた。





「お前が観たいなら別にいいよ。ほらチケット買って来い」

「ありがとう!」

「やったな隆也っ!!」


イエーイ!とはしゃぐ洋平と隆也くん。



ちょっと待ってよ…

ってことは、この4人で映画観るってこと…?

いや緊張するっての!尾神くんの横で映画観ながら平然とポップコーンなんて食べれないっ




「その代わり…俺らは映画観ないからお前らだけで観てこいよ」


尾神くんは隆也くんにお金を渡しながら言う。



え…俺らって?

私も!?





「わかった!」

「終わったら電話するからな!姉ちゃん早くお金くれって!!」


私の服を引っ張る洋平。私は「ちょい待ち」と洋平の顔面を手で押した。


どんどん話が進んでついていけてないのよ…




「尾神くんは映画観ないの?」

「一緒に観てやるつもりだったけど、洋平がいるなら観ない。2人で観に行かせた方が本人達も楽しいんじゃね?」

「そうかもしれないけど…子供だけで大丈夫かな…」


最近物騒だからって私が付き添って来たのに、一緒に映画館に入らないって意味ないんじゃ…?




「大丈夫だろ。何かあったらすぐ連絡させれば」

「うーん…」


まあ、それもそうかな。



「いいから早く金くれ!映画始まる時間になっちゃう!!」

「はいはい」

「ポップコーンとジュース買う金もくれよな」

「はいはいはい」
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