オオカミくんと秘密のキス
誰が見てもかっこいいと思うもん。

今気づいたけど、店内にいる他の女のお客さんはさっきから尾神くんをチラチラ見てる…


絶対に皆かっこいいと思ってるよね。

背も高いし目立つし…




「お待たせ致しました」


すると、店員さんがラッピングされたリードディフューザーを持って私に近づいてきた。私はそれを受け取り尾神くんと店を後にした。




「買えて良かったな」

「うん。付き合ってくれてありがとう」


不思議。男の子苦手なのに尾神くんとは自然にしてられる…

何気ない会話もちょっとしたショッピングも…緊張とかしながらも、私は尾神くんのことを少しずつ受け入れてる。

嫌だったら多分拒否っちゃうもんな…映画館で偶然会っても挨拶して終わり。弟達が映画を観ることになったとしてもカフェに行ったり出来ないもんな…


男の子と話したり一緒に行動することってずっと憧れはあったけど、やっぱりどこか他人事だったし自分には当分先のことなんて思ってた。でも、いざ話したり行動してみるとすごく楽しいんだな…




「もう買い物はいいの?他に見たい店とかねえの?」


一歩先を歩く尾神くんが、こっちを振り返りながら言う。




「うーん…もう特にはないかな?尾神くんはないの?」

「別にない」

「そう…」


弟達を映画館に迎えに行くのはちょっと早いしな…




「ま、その辺ぶらつけばいいか」


前を向いてまた歩き始める尾神くんは、またすぐにクルッとこっちを向いた。




「もたもたしてっと置いてくぞ」

「うん!」


私はサッと尾神くんの隣に行き、ぎこちなく並んで歩いた。

その後は話しながらぶらぶらとモール内を歩き、本屋を見つけたので2人で中をウロウロしたりした。そしてあっという間に時間は過ぎて、映画が終わる時間に近づいた。




「姉ちゃーん!」


上映時間が終わる数分前に映画館の入り口で待っていると、洋平と隆也くんが私達のところに走って来る。



「映画どうだった?」

「超良かったぜ!な、隆也!?」

「うん!」


テンションの高い洋平は隆也くんの肩を抱いた。




「なら良かったね」

「うん!それに見ろよこれ!じゃああん!♪」


洋平はポケットから出した物を、私にぐっと近づけてきた。距離が近すぎて正直よく見えないが、それがメダルだということはぼやけていてもわかった。




「ああ例のメダルね…貰えて良かったね」

「しかもこれレアだぜっ!すげーだろっっ!!な、隆也!?」

「うん!」


キャッキャと喜ぶ洋平の隣で控えめに笑う隆也くんを見て、さっき尾神くんから言われたことを思い出す。


隆也くんは家庭環境で精神的に病んでしまったんだよね…

私が隆也くんの力になれることは何かないかな?こんなふうに笑う隆也くんに何かできることが…





「腹減った~なんか食おうぜ!」


急に力ない声を出す洋平は、その場にヘナヘナとしゃがみ込む。
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