オオカミくんと秘密のキス
こいつ…いつもキスすると怒るくせに、今日はなんでこんなに無防備なんだ?


男んちに来て寝て…おまけに服が少し乱れてる状態…で、少しは俺に心を開いてくれたってことか?それとも…



俺は少しイライラした。沙世の考えてることがわからなかったから…

気持ちを落ち着かせるようにキッチンへ行き冷蔵庫を開け、沙世が買ってきた飲み物を開けて飲むと、俺は自分の部屋へ行き着替えを持ってバスルームへ。

そして熱いシャワーを浴びながら、リビングで眠る沙世のことを考えていた…



あそこで沙世にキスするのも…セクハラの延長的な事をするのも簡単だ。だけど、それを繰り返したところでどうなるんだろう…

結局沙世が怒って俺がふざけて終わるのがオチ。


こんなことを繰り返して沙世とは付き合えんのかよ…

沙世が俺の事を好きになってくれるのを待つつもりでいたけど、あんなに無防備にされるとさすがにモヤっとする。


俺はしばらくシャワーに打たれたあとにお湯を止めて、風呂から出るとバスタオルで髪と体を拭いた。

リビングの様子を伺うと、沙世が起きている様子はない…






…ちょっといじめてみるか。








俺は心の中でニヤリと笑い、ズボンだけ履いてバスルームを出た。まだ濡れている髪から雫が落ちて、肩にバスタオルをかける。そしてリビングに行くと、沙世はまだスヤスヤ眠っている…


さっきかけたはずの毛布を寝返りを打った時にはいだのか、またセーターから肩が丸見えになっていて、今度は中に着ている白のキャミソールも見えている。




こいつ…

マジで一回シメてやる…







ドンッ





俺は沙世の頬を手でそっと触ったあと、寝ている沙世の上に覆いかぶさった。

横を向いて寝ていた沙世が、ビクッと肩を動かすと目をパチッと開け目をこすり始めた。そして寝ぼけた様子で体を仰向けにした時に、初めて覆いかぶさっている俺の存在に気づく。



ごめんな沙世…でもお前が悪い。





「なっっっ、なに!?ちょっ…あのっ」

「…はよう」


沙世の顔は一気に赤くなり、とっさに顔を手で隠している。




「おはようじゃないっ!どいてよっ」

「嫌だ」

「ふざけないでよ!どいてってばっっ」

「ふざけてねえし」


バタバタと暴れる沙世の両手を一度掴み、俺は沙世からそっと離れた。一気に目が覚めた様子の沙世は、ソファーに座り上半身裸の俺を見て更に顔を赤くした。






「な、なにすんのっ!変態っっ!!!変態狼バカ男っっっっ」


やっぱり怒った。ここまでは予想通りだ。




「お前にそんなこと言われる筋合いねえよ」

「は、はあ?」


俺もソファーに腰をかけると、沙世は俺から離れてソファーに座り直す。






「お前…男んちに来てあんなに無防備に寝れる奴だったんだな」

「え…」


沙世の表情が一瞬で変わり、心が少し痛くなるが俺は続けた。





「俺の横で平気で爆睡しておまけに服も乱れてた…お前ってもしかして誰にでもあんな感じなの?結構に軽い女なんだな」

「ち、違っ…」


やば。結構キツイこと言った…けど、これは俺の気持ちでもある。





「…お前ってそんな奴だったんだな。正直ガッカリし………げっ」


トドメの一言を言った後「なんちゃって」的な事を言って終わらせようと思ったのに、沙世は突然ボロボロと涙を流した。





「ご、ごめん沙世!冗談だから…」


ひとまずそういうことにしておくが、今のは決して嘘ではない。






「軽くなんかないもん!誰にでもあんなことするわけないでしょ!尾神くんだからに決まってるじゃんっ」
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