吹き渡る青空
裕也は窓から外の景色を確認した。空は雲で覆われていて真っ白とも灰色とも言えない微妙な色を映し出していた。スカイツリーが見えないので決していい天気として評することはできなかった。次は自分がいる図書館の4Fの一室を見回す。決して狭くないであろう、この約13畳の部屋には裕也と健の他には誰一人としていない。それは今だけではなく、すべての時間を通してそうなのである。裕也は机の上に無造作に置かれた課題や選考図書を綺麗にまとめて、机の端に寄せた。

「裕也バイト何時から?」

沈黙に耐え兼ねたわけではなく純粋に興味を持って聞いてきた健に素っ気なく答える。

「18:30」

健はふーん、というと興味なさそうに話を流した。どっちなんだよ、と裕也は少し苛立ちを覚えたが、しかしこんなやつに腹を立てる必要もないかと少し笑ってしまった。
今現在17:10なので、あと一時間したらここを出てバイトに向かわなければならなかった。裕也は短く切ってある髪をボリボリと掻くと、大きなあくびを一つして簡易ソファーにもう一度深く腰をおろした。この時間になっても外はまだ明るく、夏なのだなぁということを裕也は実感した。確かに昼は滅法暑く、女の子はますます薄着になり、男どもはそれをウハウハしている点から間違いなく夏は夏ということは分かっていたのだが。

「はぁー」

そんなことを考えていると、健は何やら重々しくため息をついた。

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