【いつきの小説講座】
■例2

 カフェ・オレのオーダーを受けた俺は細心の注意を払いながらいつものようにグラスに珈琲を流し込み、そこにミルクを、ゆっくり、しずしずと、そそいでいく。




もう一度読んでみよう。

皆この文章を読んだときに“流し込み”のところまでは一気に読んでその後を読点ごとに切って読んだんじゃないだろうか?

これがいわゆる“緩急(かんきゅう)”というやつだ。

ここで大事なのはなぜそのような緩急をつけているか、ということ。

ここでは“ミルクを慎重にそそいでいる”ということを強調させたいわけだな。

初めを一気に読ませることで後に読点で区切った部分が急ブレーキでもかけられたみたいにゆっくりに感じられるはずだ。

証拠に、


■例3

 カフェ・オレのオーダーを受けた俺は、細心の注意を払いながら、いつものようにグラスに珈琲を流し込み、そこにミルクを、ゆっくり、しずしずと、そそいでいく。



こうするとどうだろう?

例2に比べてリズムがほぼ一定でミルクをそそぐ部分がほとんど強調されていないように感じるんじゃないだろうか。

しかもここまで読点が続くと見栄えが悪い上に“うっとうしい”と感じてしまう。

このバランスがなかなかに面倒なのだけれど、こういったリズムの作り方を覚えておくとそれぞれのシーンを描写する上での幅が格段に拡がるし読み手のリズムを操作することで作品に引き込みやすくなってくる。

どうだい?

面倒じゃぁあるけれどわくわくしてくるだろう?

この読点の“足し引き”が作品のリズムを形作るひとつの要素だ。


しかし!


さっき挙げた注意点の他にも携帯小説だからこそ起きやすい問題点もある。

それについても話しておこう。


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