パラレルワールドでゲーム戦争
ピンポーン
「宅配便でーす」

朝からマンションのインターホンが鳴る。
インターホンが鳴った部屋からのっそりと出てきたのは、ボサボサの髪をした、服をだらしなく着る少年。

部屋の名札には、『笙瀬』と書かれている。
ここが、笙瀬 柃の住んでいるところだ。
「あ、もしかしてもう!?」
「さ、さぁ……どうぞ」
「"いつも"どーも」

いつも、と言う言葉はあながち間違いではなく、ほぼ毎日のように宅配で何かが届いているのだ。
その殆どがゲーム類。
仕方ない、柃はゲームさえあれば何もいらないぐらいの、ネトゲーマーだから。

笑みを灯さず嬉しそうに言う柃の顔は少々不気味だ。
宅配便を届けた男性は、そそくさと帰り、それを確認すると柃は扉を思いっきり閉めた。

「最近色々注文してるからな〜これ何だろ…」
少し大きめの段ボールを抱え柃は狭い廊下を歩く。
前が見えないので、一歩一歩慎重に進むが、思わぬアクシデントが起こる。

「ん、うわっ!!!」

床に置いてあった何かを踏み付けて、足を滑らせた。
そして段ボールを抱えたまま後ろに仰け反る。

言っておこう、柃は成績優秀なのだが、とてつもない運動音痴なのだ。
50m走10秒台、握力15以下、長座体前屈20cm以下、反復横跳び20回。
運動音痴にも程があるが、運動神経ワースト1位は譲れないぐらいの実力。
けして、誇れるものでは無いのだが…。

両手に段ボールを持ち、足元が見えていない状態では、この状況を回避するのは普通の人でも難しいだろうが、柃の場合、回避するのは100%無理。
仰け反るだけならまだしも、その後体制を整えられずそのまま後ろへ倒れる

ずってーん!!

激しい音と共に尻餅を付いた柃に、第二の災難が降りかかる。

「いった……って、嘘だろ?」

窓から微かに入ってくる太陽光が遮られた。
理由は簡単、山積みにされた段ボール(中身入り)が雪崩れたから。

しかも柃に向かって。

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