片道キップを二人分



「なぁ」

呼びかけられて考えを中断して徹也さんを見上げれば、ポンッと大きな手があたしの頭を撫でてくれた。



「オレ、挨拶した方がいい?」
「え?」
「なんか、すげぇ睨まれてる感じだしよ」

苦笑する徹也さんは大人で、やっぱり斗真とは似ていないと思った。



「ごめんなさい…送ってくれてありがとう」
「…帰れってことね」
「え?あ、の、だって…」
「あー、嘘嘘。ごめん、意地悪言って……今日の所はとりあえず帰るわ…」
「あの、ほんとに」
「いいからいいから。ほら、早く行った方がいいって……オレもさすがに、若いのに殴られるのは嫌だし」

じゃ、またね、と徹也さんはヒラヒラと手を振って背中を向けた。
あたしはそのままボーっと徹也さんの背中を見送って、小さな溜息を吐く。


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