私立白百合女学園~少女たちの秘密の園~
「それにしても、こんな所にあったんだ。薔薇園…」
陽光で雪も大分溶けてきた。
私たちは水溜まりにはまらないように、慎重に薔薇園を散策していた。
エリカは不思議そうに頷いた。
「別に秘密にしてる訳じゃないんだけどね、どういう訳か人には見つからないのよ」
多分手入れをしてないから入れないのね──とエリカは一人ごちた。
「でも『行きたい人にしか行けない』って…」
「あぁ…それね。何となくそんな気がしたの。この薔薇園は入場者を選んでいるような」
「…ふん。それはお偉いことで」
私が拗ねたように言うとエリカは吹き出した。
「私、毎日ほとんどあの部屋からこの薔薇園を見てるのよ」
エリカはおもむろに切り出し、エリカの屋敷の自室──今朝私たちがいた場所を指差した。
「ここの植物たちは何をするわけでもない、人に見られることも無いのに、本当に綺麗に咲くのよ。季節によって全く違った顔を覗かせるの」