レイアップ


「なんて顔してるんだ。頼むからそんな顔しないでくれ」

ミウは少し間をあけて、うつ向きながらいった。

「楽しくなけゃいけないのか・・・」

どこか聞き覚えのあるセリフだった。

「あの時、シュウが私にいったんだよ」

「おれが?おれはミウと話をしたのか?」

「一言だけね。あの時、私はどうしても聞きたくなったの。練習試合を終えて相手チームが引き上げていく中、私は体育館の入り口で、自分の横を通り過ぎるシュウに声をかけた」

突然、自分の右肩をポンと誰かに叩かれて、おれは驚いて後ろを振り向いた。するとそこには、もう一人のミウの姿があった。髪の毛は同じ金髪だが、その顔は今より少し幼い。彼女はいった。

『ねえ、バスケ楽しい?』

言葉が出なかった。また肩をポンと叩かれて、同じく後ろを振り向く。こんどは見慣れたミウの顔。

「思い出した?」


「半信半疑だ。でも、もしかしたらいったかもしれない」

ミウはピシャリといった。
「かもじゃない。楽しくなきゃいけないのかって、冷めた顔でシュウはいったんだよ。だから、私はあの瞬間から、シュウのことが嫌いになった」

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