不機嫌な彼のカミナリ注意報2
 塚原さんのフォローから外れたと言えども、うちのチームには新たに大きな仕事が舞い込んできている。
 風見さんが忙しいのに変わりはない。
 それは百も承知なのだけれど、私はおずおずとその誘いを口にした。

「再来週の十四日?」

 もじもじと、なんとも言えない苦い顔で立ち尽くす私に、風見さんはいつもの切れ長の瞳を無表情で差し向ける。
 なぜその日を指定してきたのかと抗議の意味が含まれているような気がして、私はバツが悪くて視線を床に移した。

「ホワイトデー、か」

 なにもかもわかっている、と言わんばかりに、呆れた表情で風見さんが手にしていたコーヒーを飲み干す。

「……バレましたか」

「飯くらい俺から誘おうと思ってたのに。自分から言い出すなよ」

 本当に、もうどこでもいいから穴を見つけて埋まりたい。
 恥ずかしさから、カァーっと顔に熱が集まるのが自分でもわかる。

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