不機嫌な彼のカミナリ注意報2
 付き合っているころは、本当に栞とは仲が良かった。
 こんな俺でも、そこそこ上手く女と付き合えていたと思う。

 というのも、栞は昔からサバサバした性格で、おおらかだし細かいことは気にしない。めげることのない強いメンタルの持ち主だったから。

 俺は何事にもポジティブ思考で、計算のない明るい栞が好きだった。
 サバサバした中にも、急に女らしくてかわいらしいところを見せたりする。
 ……なんて言うのか、ある意味ツンデレに近いような感じかもしれない。そんなギャップにも惹かれていた。

 昔はけっこうハマっていたと思う。
 過去に付き合った女の中で、一番惚れた人物ではないだろうか。そういう自覚はある。

 だけどそれももう、九年も前の……昔の話だ。

 目の前の栞をチラリと盗み見ると、夏野が淹れてきたコーヒーのカップを細くて綺麗な指先で持ち、フーっと冷ましながら口に含んだ。

 そういえば栞はかなりの猫舌だったか。
 そんなことまで、その仕草で思い出してしまった。

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