不機嫌な彼のカミナリ注意報2
 驚きながら抗議の視線を送る私をよそに、まるで最初からそんな約束が交わされていたかのように、笹岡さんが椅子からすっくと立ち上がった。
 私は未だになにが起こったのか理解できずに放心状態だというのに。

「緒川さん、早く行かないと昼休みが終わっちゃうよ」

「……はい」

 ほら、と軽く急かされたところで、これは笹岡さんがこの女性のお弁当を断るための逃げ口上だと、ようやく頭が回転し始めた。
 とりあえず今は笹岡さんに話を合わせておくのがベストだと判断して私も立ち上がる。

「へぇ……おふたりは仲がいいんですね」

 外出用にコートを羽織っていると、背後からその女性がポツリと言葉を漏らした。

 ……トゲがあるような、ないような。
 そう呟きたくなる気持ちはわからないではないけれど。

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