不機嫌な彼のカミナリ注意報2
 マーケティング部の仕事は初めてだというのに、飲み込みはほかのヤツよりも断然早い。
 頭がいいというか、回転が速いのだろう。
 塚原は入社したてのころの瀬戸を彷彿とさせる。

 おそらくそんな部分を買われての、新リーダー抜擢だったと思われる。
 たしかに上が期待するように、彼女は将来楽しみな人材だ。

「あの……すみません、風見さん」

 そんな中、おずおずと俺の傍まで静かに歩み寄ってきたのは緒川だった。
 両手で持っていたA4の紙を、恥ずかしそうにそっと俺に差し出す。

「この件の市場調査は、誰に行ってもらったらいいですか?」

 ……なんだ、純粋に仕事の話か。
 などと、少しでもそんな考えが過ぎった俺はバカだな。ここは会社だ。仕事の話に決まっている。

 だったらなぜそんなに恥ずかしそうに顔がニヤけてるのかと突っ込んでやりたい。

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