龍泉山の雪山猫
帰郷祭り
田んぼが金色に揺れる時期が来た。
夏の終わりはいつも大忙し。わたしは少しずつ元気になってきているお母さんと一緒に毎日働きづくしだった。
女二人じゃ大変だろうって、家の仕事を終わらせてからジンタがわたしたちの手伝いによく来てくれる。ジンタはあれから縁談のことは一言も口にせず、以前と同じように接してくれた。
前と同じ暮らしに戻れて、それにお母さんも元気になってきてて、すごくうれしい。

でも、なんだか物足りないような気持ちでいっぱいになる。

あれからわたしは龍神様の神社には行っていない。アオの姿も一度も見ていない。
それなのに、浮かんでくるのは彼の青い瞳、低い声、熱い肌...。

もう、会えないんだから早く忘れてしまいたかった。


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