龍泉山の雪山猫
突然鋭い何かがわたしの両肩に食い込んだ。
そして、わたしの体は川の流れから引きずり出され、渇いた岩の上に置かれた。

「しっかり!」
優しく、透き通った声が聞こえた。

わたしはしばらく咳き込んで水を吐き出してから、ゆっくりと目を開けた。
視界がぼんやりとする。身体中が痛い...。

わたしの顔を覗き込んでいたのは、昨日見た白い龍だった。

「よかった...。」
白い龍はわたしの呼吸が落ち着いてくるとそう言った。

どうして、どうして助けるの?
死のうと思ってたのに!
死ねば、またアオに会えるから...。



「わかっています。」
まるでわたしの心の声を聞いたかのように白い龍が言った。

「あなたが自ら命を絶とうとしていたこと、わかっています。でも、まだ遅くない。アオ様は生きておられます。」

アオが...生きてる?

「はい。でも、時間がありません。サチさん、お願いです...。」
白い龍はゆっくりと頭を下げた。

「お願いです。天界を...わたくしたち龍族を助けてください。これほどの仕打ちをしておいて、勝手なことを言っていること、わかっています。ですが、あなたしかいないのです。お話だけでも聞いていただけませんか?」


『アオを、アオを助けることができるの?』


わたしの心の声に白い龍はうなずいた。
どうやら、この龍はわたしが心で話しかけるとそれが聞こえるらしい。

「はい。わたくしは白龍。名はトワと申します。わたくしは白竜の最後の生き残り。白竜は最弱の青龍よりも体が弱く、術もほとんど使えません。ですが、特殊な力を持って生まれてきます。わたくしは選んだ者の心を読み、そして先見をする力を持っています。」

先見...。

「サチさん、お話は少々お待ち下さい。もうすぐこの場に武器を持った村人たちがあなたを殺しにやってきます。もっと山の上まで移動しましょう。」

トワはそう言ってわたしの両肩を鉤爪で掴むと、空に飛び上がった。
下を見ると、弓矢を持ったジンタと村のおじさんたちが川を上ってくるのが見えた。ジンタの手には昨日着ていたわたしの着物が握られていた。


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