巡逢~茜色の約束~
「……千速くん」



突然ドアの向こうから聞こえた、美生のか細い声。

それが耳に届いたとき、俺の情けなくも小さな肩が跳ねた。



……来るなよ。

なんで来るんだよ、馬鹿。

今傍にいられたら、縋ってしまいたくなる。



「……戻れよ」



精一杯の虚勢を張って。

声が震えないように唇を噛み締めて。

それはなんと滑稽な姿だろう。



「嫌だよ、戻らない」

「……なんで」



さっきとは違う、力強い声で美生は言う。



「今の人、怖かったから。思い出すだけで怖くて、1人でいたくないから。だから千速くん、一緒にいてよ」



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