Rainbow Note

日常に花

さて、お母さんの命日に久々に帰ってきたお父さんがお仏壇にお線香をあげていつものようにお母さんに近況報告をする。
「お母さん。命日ぐらいしか帰って来れなくてごめんね。家族のことは僕より昌枝さんと庄平さんの方が僕よりよっぽど知っていると思うけど、近況報告をします。
昌枝さんは去年から所属しているコーラスの地区大会を優勝しました。見に行ったけど、本当に上手かったです。
庄平さんは、まだ立派にお仕事を続けています。この間は社員さんをつれてゴルフに行ったらしいのですが、社員さんに負けないスコアを出していました。びっくりです。
そして啓介。啓介は例の彼女とまだ付き合っています。もう3年半になりそうです。これからも幸せでいて欲しいです。
和ちゃんは、相変わらず高校のお友達と彼氏作りに励んでいるようです。来年はお母さんにいい報告ができるようにお勉強も恋も頑張って欲しいです。
シロ、タマ、ぜんざいのことですが、シロはよく入念な毛づくろいを終えるとどこかに出かけて行きます。彼氏でしょうか。タマは最近あらゆるひきだしの中に身を隠しています。ちょっと困ってます。ぜんざいは相変わらず番犬にはなれなさそうです。
最後に僕は、お仕事順調です。お母さん。相変わらず皆元気です。お母さんもそちらでお元気にしていてください。」

来年はいい報告ができるように…か。何の気なしにお父さんは言っているのかもしれないけれど、なかなかのプレッシャーが私の身にズッシリと降りてきた。
おじいちゃんがビールの栓を開けるとプシャッと少し間の抜けた音が鳴った。
お父さんの近況報告に補足したい人はそのあとお母さんへの報告会が始まる。
私は少しお兄ちゃんに聞きたいことがあった。
「お兄ちゃんってなんで桜さんとお付き合いしようと思ったのですか?」
これは1番気になっていた。前にも言った通りお兄ちゃんは、優しくて大人しくて笑うお兄ちゃんだ。笑うだけで決して明るい訳ではないし、ましてや過去の経験上なんとなく影がないとは言えない。家族もお兄ちゃんには何と無く気を遣って接しているため、お兄ちゃんも家族に気を遣っている。そんなお兄ちゃんと付き合っている桜さんはどれだけ凄い人かといつも気になっていた。
「桜ちゃんは…何と無く安心できたから。深く入り込んで来すぎたりしなかったからかな。」
確かに桜さんはフワフワした雰囲気で優しそうだ。なんとなく分かった気がする。私はお兄ちゃんにそれだけ聞くと、おばあちゃんの隣の席に戻った。

夕食の間、お父さんはお兄ちゃんに色々話を聞いていた。大学のこととか、それこそ桜さんとのこととか、バイトのこととか。お兄ちゃんもそんなに深いことは話さなかったけど、楽しそうに話していた。
お兄ちゃんはお友達といる時は明るくてよく笑う。多分心から笑っていると思う。だけど、綾奈の話を聞くとお兄ちゃんは時々さみしそうな顔をするから心配で声をかけるけど「大丈夫。」と笑って元に戻る時があるという。綾奈のお兄ちゃんはお兄ちゃんと高校からの親友で今は大学も一緒だ。
私もおじいちゃんもおばあちゃんもそんなお兄ちゃんが心配だけれど、あまれ詮索しないようにしていた。
しかし、お父さんはお兄ちゃんと話すのが上手い。

「啓介はなにか最近考えてることあるだろ?」

「いや?そりゃ人と関わっていれば考えてることがないわけないでしょ。」

「そういうの。溜まると疲れちゃうから。少しずつ減らしていくといい。お父さんなんかでよければね。」

お父さんはそれだけ言うと、それ以上お兄ちゃんの私情に踏み込もうとはしなかった。お兄ちゃんも少し笑っていた。顔を見てみると何も話していなくても少しだけ安心したような顔をしていた。

明日は例の文化祭の日。私もお父さんになにか相談してから行こうかな。






















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