聖夜に舞い降りた天使
エピローグ
-----1年後
聖夜のモントリオール



昨日降り積もった雪がまだしっかりと固まっていない道を革靴に雪を埋めながら僕は教会へと向かっていた。

ふと腕時計に目をやる。


既にクリスマスミサは始まっており、ぱらぱらと僅かな人が教会へと足を運んでいた。

雪が僅かに積もる階段を上り、教会の扉を開ける。










途端に人々の熱気とパイプオルガンの荘厳な音色と波打つような空気に身体全体を包まれた。


聖歌隊がキリエ(憐みの賛歌)を歌い始める。

教会の外の閑散とした雰囲気とは対照的に、中では人々がすし詰めになって席の前に立ち、
聖歌隊と共に歌っていた。

座ることができず、溢れた人々は席の後ろに固まって立っていた。

僕は最後尾に立つと、頭越しに覗く聖歌隊や参列している人々の様子を目に映していた。


キリエが終わると続いてグロリア(栄光の賛歌)の前奏が流れる。

聖歌隊が天井まで響く美しい歌声で
「Les anges dans nos campagnes(天のみつかいの)」
を歌い上げる。


Les anges dans nos campagnes, 

天使たちが野辺で
Ont entonné l'hymne des cieux ; 

天上の賛歌をうたい始めた 

Et l'écho de nos montagnes 

山々からの木魂(こだま)は 

Redit ce chant mélodieux : 

心地よい歌を繰り返す 

Gloria in excelsis Deo 

天においては神に栄光があるように 

Gloria in excelsis Deo 

天においては神に栄光があるように










曲が進むにつれ



耳から入る聖歌隊の歌声と

心の奥に深く沈んでいた記憶の中のアンジュの歌声が溶け合って





僕の胸をざわめかせていく……










僕は教会の重い扉を開けて外に飛び出していた。








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