聖夜に舞い降りた天使
雪が足元に絡み付きながらも足早に歩いて行く。
チョコレートショップやクリスマスストア、アンティークショップ等の建ち並ぶ通りを脇目もふらず、ひたすら足を進めた。
パブを通り過ぎる時に扉のすぐ近くに立って煙草を吸っていた数人のグループが目につく。
彼らは僕をみとめると、口々に
「 Joyeux Noël!(メリークリスマス!)」
と言ったが、僕は目も合わさず、ただ片手を上げて応えると更に足を速めた。
石畳の道を過ぎ、国立総合病院をチラッと眺めると走り出した。
「ハッハッハッハッ……」
短い呼吸を繰り返し、足をもたつかせ、絡まりそうになりながらも
あれから一度も通ることがなかったアパルトマンへの近道へ向かって必死で走る。
雪に埋もれた遊歩道を無視して斜めに突っ切る。
途中革靴が雪に絡めとられてバランスを崩し、バサッと勢いよく雪の中へダイブした。
脱げてしまった革靴を拾い上げ、濡れた靴下の上から履くと髪の毛やジャケットについた雪を払うことなく立ち上がる。
立ち上がった視線の先には街灯があった。
僕が天使を見つけた、あの街灯が
(いない……)