私の弟がヤンデレ過ぎて困る。
「…お前さ、来る場所間違えてんじゃねぇの?」
河原君の殺意の籠った瞳が、私を殺す。
私は、河原君が恐くて、怖くて、1歩も進めずに、言葉を発する事も出来ないまま、立ちつくすしかなかった。
「……人の話聞いてんのか?出てけっつってんだよ、こっちは。」
河原君の声が、低く、重くなっていく。
同時に、先程の空気がより濃くなっていく。
このままだと、ヤバい。
何故だか分からないが、そう確信した。
「………人の話を聞かねぇ女は嫌いなんだよ。痛い目みたくねぇなら、さっさと、消えろよ。うざったい。」
まだ、まだ声が出そうに無い。
脚も震えて、すくんでしまっている。
チッ、と河原君の舌打ちが部屋に響き、部屋に響き渡った。
「…俺の寝床に来てるって事は、少し痛い目みる覚悟は出来てんだろーなァ?」
河原君が、持っている携帯をソファーに投げ、私の方へやってくる。
ドン!!と私の頬を掠め、私の後ろのドアに河原君の拳がめり込む。
「……ナァ?ニノマイちゃんよォ?」
河原君の血走った瞳が、視界いっぱいに映る。
怖さのあまり、崩れ落ちそうになったが、堪えて、喉の奥に息を潜めている声を絞って一気に出す。
『…これ、学校のお便りで、渡すように言われて…、それだけ…。本当に…それだけだから…。』
涙が零れそうになるも、必死に耐える。
そして、持っていた封筒を河原君の胸に押し付ける。
急いで、逃げないと…、
恐怖のあまり、固まっていた頭が一気に動きだし、脚に伝わり、その場から、逃げ出そうと脚を勢いよく出し、駆ける。
だが、その瞬間に、腕を凄い力で引き寄せられ、河原君の胸に肩が当たる。
「待てよ。…ニノマイちゃん。ちょっと、話しよーぜ。二人っきりでな。」
河原君の加虐的に光る瞳が、さっきよりも強くなった。