私の弟がヤンデレ過ぎて困る。




「…お前さ、来る場所間違えてんじゃねぇの?」


河原君の殺意の籠った瞳が、私を殺す。


私は、河原君が恐くて、怖くて、1歩も進めずに、言葉を発する事も出来ないまま、立ちつくすしかなかった。



「……人の話聞いてんのか?出てけっつってんだよ、こっちは。」

河原君の声が、低く、重くなっていく。

同時に、先程の空気がより濃くなっていく。



このままだと、ヤバい。


何故だか分からないが、そう確信した。




「………人の話を聞かねぇ女は嫌いなんだよ。痛い目みたくねぇなら、さっさと、消えろよ。うざったい。」


まだ、まだ声が出そうに無い。


脚も震えて、すくんでしまっている。




チッ、と河原君の舌打ちが部屋に響き、部屋に響き渡った。


「…俺の寝床に来てるって事は、少し痛い目みる覚悟は出来てんだろーなァ?」

河原君が、持っている携帯をソファーに投げ、私の方へやってくる。

ドン!!と私の頬を掠め、私の後ろのドアに河原君の拳がめり込む。

「……ナァ?ニノマイちゃんよォ?」

河原君の血走った瞳が、視界いっぱいに映る。

怖さのあまり、崩れ落ちそうになったが、堪えて、喉の奥に息を潜めている声を絞って一気に出す。


『…これ、学校のお便りで、渡すように言われて…、それだけ…。本当に…それだけだから…。』

涙が零れそうになるも、必死に耐える。


そして、持っていた封筒を河原君の胸に押し付ける。

急いで、逃げないと…、

恐怖のあまり、固まっていた頭が一気に動きだし、脚に伝わり、その場から、逃げ出そうと脚を勢いよく出し、駆ける。











だが、その瞬間に、腕を凄い力で引き寄せられ、河原君の胸に肩が当たる。



「待てよ。…ニノマイちゃん。ちょっと、話しよーぜ。二人っきりでな。」


河原君の加虐的に光る瞳が、さっきよりも強くなった。


< 23 / 40 >

この作品をシェア

pagetop