私の弟がヤンデレ過ぎて困る。
午前7時30分。
朝食と身仕度を済ませ、いつも通りの時間帯で家を出る。

冬の通学は、苦行だ。
男子なら、ズボンで寒さをしのげるが、女子はスカートでなにをしのげというのだろう。ストッキングやタイツ、靴下を掃いていても、所詮皮1枚。

装備しても、防御力は1にも満たないだろう。

制服で団体意識を高めるのは良いが、こんな冬場に低装備なのは如何なものか。


そんな事をあれこれ考えていると、後ろから私を呼ぶ声が聞こえた。


「おねぇちゃん。忘れ物だよ。」

と言って、私の首に藍色のマフラーを巻く。誕生日プレゼントに、弟が私に買ったものだ。

「…それに、俺を置いていくなんて酷いよ。約束したじゃん。学校の行き帰りは、俺と一緒に行動するって。」

ぶー、ぶー、と拗ねる弟。
ゴメン、ゴメンと平謝りするも、弟の機嫌はなおらないようだ。

『たまには、一人でのんびり学校行きたいなぁと思って。』

「…そんな事言っても、ダメダメ。俺、おねぇちゃんが一人で出歩くの、絶対許さないから。」

ムスッと余計表情が固くなる弟。

どうやら失言だったようだ。


『本当にゴメン。でも気持ちだけは、嬉しいよ。』

日本人特有の社交辞令で返してみる。

にっこり、作り笑顔もそえて。




すると、弟は急に私から視線を外し、明後日の方向を見てしまった。

ほんのり、顔が紅い。



そして、私の手を掴み、早足で通学路を歩いていく。

『…ちょ、ちょっと待って、速いよ。』

弟の突然の行動に、内心戸惑いつつも、弟の早足に合わせて歩くのに精一杯だった。




「…早く学校行かないと、…遅れるから…。」


そう言って、私の顔は見ずに、歩く弟。


別に、前のペースでも遅れないんだけどな。と思いながらも、口には出さずに弟の早足に合わせて歩く。









結果、通常の時間よりも10分早く学校に着いてしまった。早足で歩いた為、半ば息は途切れ途切れだった。



「…俺…、朝練あるから、行くね。」

弟は、真っ赤な顔で視線を合わせずに、大きな竹刀の入った黒い鞄を背中に背負って、歩いて行った。




私はいつの間にか、自分の身長を上回った弟の後ろ姿を暫く見つめていた。




随分、大きくなったなぁなんて、思いながら。





弟の姿を見つめていた。





あ、弁当忘れた。
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