お見合いに来ないフィアンセ
―駿人side-

「ただいま」と家の玄関を開けると、呟いた。

 実家に帰る予定ではなかった。今夜は大会の後の打ち上げをして、一人暮らしをしているアパートに帰って眠る予定だったが……。

 一つ確認しなければいけない事項ができたから、僕は帰る決意をした。

「あら、駿人。珍しいじゃない」

 ダイニングから出てきた母親が、にっこりと嘘くさい微笑みで出てきた。

 後ろには、白髪交じりの執事が静かについてくる。

「聞きたいことがあって。確認したらすぐに出ていく」

「確認したいこと? なにかしら」

 ルンルンっと思わず後ろに書いてあるんじゃないかと思うような軽い口調で、母親が話す。

 白々しい態度は、僕は好きじゃないが、おやじはそんな母親が好きらしい。だましやすくて、という意味だろうが。

「山村 美月さん」

「だあれ?」

 またも白々しい嘘をつく。

「これで何人目だろう。僕の知らないところで、勝手に見合いをセッティングして、見合いをつぶしていくの」

「なんのこと?」

「僕、山村美月さんと付き合うから」

「は!? ちょっと、何してんのよ」

 母親が僕の腕を強くつかんだ。
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