ワンルームで御曹司を飼う方法

 5分ほどの時間を経て、ようやく2度めの現状理解が出来た社長はテーブルに肘を着いて頭を抱えていた。

「……そんな消費税みたいな給料がこの世にあるなんて……」

「言っときますけど、一応結城の子会社ですからね」

「これは次の総会で話し合う必要性があるな」

 社長は真剣に悩んでいたけれど、正直私は結城の経理体制などどうだっていい。それよりも問題なのは今の生活費なのだ。

「とにかく、そういう訳なんで社長も節約に協力して下さい」

 食器を洗うついでに部屋で育てているカイワレ大根に水を足すと、それを目にした社長が

「まさかお前。その草育てて食べるつもりじゃ」

と驚愕におののいていた。

 それにしても冗談抜きで現状打破の手立てを考えなくては。節約だけで13万のふたり暮らしはなかなかどうして無理がある。

 そもそも社長を勘当したおじいさんは何ゆえ孫に一銭も渡さなかったんだろう。転がり込まれた方の迷惑などこれっぽっちも考えていない。

 仕事が終わったらアルバイトでもしようかなあと考えていた時だった。ピンポーンとチャイムを押す音が部屋に鳴り響いた。

「こんな時間に誰だろう?」

「また狩野が家出してきたんじゃねーのか?」

 時計の針はもうすぐ22時。狩野さんが来るにしてもちょっと遅い時間だなと思いながら扉を開ければ。

「あれ?」

 外には誰も居ない。キョロキョロと左右を見てみたけれど人の気配は無いようだ。

「イタズラかな。やだな」

 そうしてドアを閉めようとした時、私は足元にひとつの段ボール箱がある事に気がついた。
 
< 50 / 188 >

この作品をシェア

pagetop