ワンダーランドと春の雪

おとぎの国のベジタリアン










お城の前に着くと、

中性のヨーロッパを思わせる
沢山の彫刻たちが

まずは私を出迎えた。



かつては庭園だっただろう場所には

乾涸びた噴水を取り囲むように

枯れた茨のアーチが並んでる。



そのまま奥に進んでいくと

開け放たれた玄関の扉が、ぽっかりと黒い口をあけていた。




私は お城の中に広がっている闇に
向かって一言。


「こんにちは~……?」




うん、

誰もいないよね、やっぱり。




「お邪魔しま〜す……開いてるので勝手に
入りま〜す……」




むなしいことは分かってるけど、
もし人がいたときのために一応 入ります宣言
しといた方がいいなって。





それにしても、お城の中は暗すぎて

中の様子が分からない。




私はリュックから懐中電灯を取り出して、

その電源を入れた。




懐中電灯に照らされたお城の中は、どうやら
大きな広間になっていて、

奥へと続く階段は

一つだけのようだった。





お城の中も、外の遊具たちと同じくらい
荒れていた。

汚れたステンドグラスの窓は 粉々に割れ、

鎧や彫刻は破壊され、欠片がところどころに
散らばっている。

壁や床もやっぱり汚れていて

人の手型のような形の赤黒いシミや、

中には何か赤いものがこびりついて、
錆びて固まった剣なんかも落ちている。

昔ここで何かが起きて
そのまま放置されたかのような場所だ。

天井からぶら下がってるシャンデリアだけは
何とか普通の状態を保っている。


そんな
異様で壮絶な光景に、私は思わず
息を呑んだ。






階段を上って更に奥へ行くと

そこは一階の大広間と同じくらい
大きな部屋で、

汚く破れた青いカーペットが
一台の玉座まで続いていた。


謁見の間、ってやつなのかな。



それにしても廃墟とはいえ、
本格的な遊園地だと思う。

お城とか遊具も可愛いし、今も営業してたら
夢の某テーマパークにも負けてないかも
しれない。

……それはさすがに言い過ぎか。




この部屋も

やっぱり赤いシミが、青と桜色のタイルの
床に たくさんついている。

この部屋は特に酷い。

もはやシミじゃなくて、血しぶきのようだ。




「殺人現場みたい」



私はそう言って

懐中電灯で近くに飾られている肖像画を
照らしてみた。



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