ワンダーランドと春の雪





サキハラの振り降ろした包丁を何とかよけて、
私は何度もこけそうになりながら謁見の間を
駆け抜けた。





「逃げちゃダメダメよー!ジャパニーズ
ガール!」




変な喋り方で、フィンセントが私の行く手を
阻んできた。

そこに唸り声を上げながらスマイリーが
殴りかかってきたので、

フィンセントの近くまで走って、ギリギリの
ところでスマイリーの手をよける。



当然、スマイリーは味方を殴り、
フィンセントは変な悲鳴を上げてその場に
仰向けになってのびてしまった。





そして私は再び走り出し、

転がるようにして階段を駆け下りた。







「えへへへへ! 逃さんで!」




後ろからサキハラの声が聞こえるけど、
彼はあまり走るのが速くないようだった。





さて、どうする。



大広間を突っ切って

玄関のドアの前で立ち止まった。




ゾンビだから、多分 銃は効かない。
さっきも怖がってなかったし。

そんな相手を振り切るには
さっきの二人のように、動きを止めるしかない。




私はお城の外に背を向け

サキハラが来るのを待った。





「えへへ……もう諦めたのかい」




階段の上からサキハラが現れ、

私はピストルを構えた。





「だから銃は効かないってばあ!!」




サキハラが走り出す。






そして、


彼がある特定の位置に来た時。






「……さ、最後に行っとくけど!私は
野菜ちゃんじゃなくて、春花ミライだよ」




私は天井からぶら下がってるシャンデリアに
狙いを定め、ピストルの引き金を引いたのだった。





< 17 / 67 >

この作品をシェア

pagetop